DINDI

お盆ということで、今回はこの人を偲ぶ唄。

DINDI
1965(Ray Gilbert / Antonio Carlos Jobim) Sally Doherty

Oh, Dindi, if I only had words I would say
All the beautiful things that I see

空、なんて広大なんだろう
遥か遠くに雲が流れていく
雲の行く先を僕は知らない

風は木々の葉に話しかける
誰も信じる者のない物語を
君と僕しか知らない物語を

ジンジ、もし僕に言葉があれば
あの美しいもの全てを語りたい
君のそばで僕が見たもの全てを

木々を吹く風が歌う唄のように
僕の心はいつまでも歌っていた
君と共にいる喜びに満ち溢れて

日に日に君のことが恋しくなる
ああ、そうなんだ、そうなんだ
君がどこに行こうとも構わない
僕を連れてってくれさえすれば

ジンジ、僕は今も探し続けてる
海を見つけられない川のように
君がいなくなっても、今も君を

人と雲の行く果てはどこだろう〜ぉ♪　行雲流水。人はどこから来て、どこに行くのか。誰も知らない。ただ、生きていく中で何かを見、何かを聞き、誰かと会い、誰かと別れる。何かが自分の心に残り、相手の心に残り、思い出を重ねていく。それが、生まれて来て、そして去っていくということ。
1959年アントニオ・カルロス・ジョビンが作曲したボサノヴァ。アロイジオ・ヂ・オリヴェイラがポルトガル語を作詞。ジンジとは、オリヴェイラの奥さんシルヴィア・テリスの愛称で、この曲は彼女のテーマ・ソングだった。1965年にはギルバートが英訳詞を付け、アメリカでも知られるようになったが翌年、不慮の事故で彼女は他界。英詩が彼女の死を悼むように読めるのは、後から書き換えたのだろうか。

ジョビンのトトロ顔。ガル・コスタとのデュエット。

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ジンジによる「ジンジ」。彼女は、ボサノヴァの創成期を支えた歌姫でした。このレコードが出た1960年、ボサノヴァはまだブラジルのローカル音楽。1963年にオリヴェイラがスタッフ４人で「エレンコ・レコード」を立ち上げ、積極的にボサノヴァを発信し、やっと世界的なブームとなり始めた。ところが、夫婦でアメリカに拠点を移しこれから、というときに、彼女は32歳の若さでなくなってしまう。ブラジルのアーティストは皆この夫婦の友人なので、彼女のことを忘れないためにこの歌を受け継いでいます。

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リオ・デ・ジャネイロ生まれのボラ・セチ。海にちなむ歌として「ジンジ」を取り上げています。ゆったりとしたソロ・ギターの音色。ガレスピーによって見出された彼は、ブラジルのリズムと新しいジャズの息吹とを同時に感じさせます。

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ボサノヴァをただのボサノヴァで終わらせない。1969年、ウェイン・ショーターが野性味のあるアレンジを見せています。フリージャズからフュージョンへの移行期。その大波の中にボサノヴァも呑み込もうという野心作。途中、マリア・ブッカーによって死者を霊を慰めるような静かな「ジンジ」が流れます。

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「ジンジ」を「ボサノヴァの女神」だけに終わらせない。「これはブルースだ」という解釈。ジョー・パスのしっとりしたギターに、温かく太いズート・シムズのサックス。それ以外に余計なものは入っていません（試聴はこちら）。

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21世紀に入るとこれ。ブラッド・メルドーによる変拍子アレンジ。音を外しまくってるように思えても、奇麗にまとまって聞こえるから摩訶不思議。「ジンジ」はどんなアレンジで捌いてみても、鎮魂歌のように響いてくる。