モブログでMarkdownって使えるものなの?(その2:強調)

今回、Textwellアクションの修正版、あります。


強調タグについて考えてみる

文字列を「*」で挟むと強調になる。「**」で挟めばさらに強調になる。二段階の強調がMarkdownに用意されています。でもこれ、イタリック(斜体)ボールド(太字)なんです。英語だと目立つけど、日本語ではそれほどではない。たぶん、英語は分かち書きするため、単語の一つ一つが最初から独立し、強調されている側面がある。日本語だと前後に膠着していて、さらに画数が多いから、太くしたところで目立つものでもない。

日本語で本当に強調するとき、どういう工夫がされているか考えてみました。たぶん「傍点」だろうと思います。強調のときに使う﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅。文章の上に打点のルビを振る方法。一般的にこれが日本語の強調方法です。もともとは濁音を表す表記だったのが、明治時代に濁音の作法を取り決めたため、文の強調に転用された。それが傍点です。

でも意外とブログでは目立ちません。行間が開いてしまい、美しい修飾にならない。それでイタリックとボールドが日本語にも継承されているのだろうけど、あまりに妥協策すぎる。


emタグやstrongタグの性格について

Markdownで不思議なのは、イタリックやボールドであるのに、iタグやbタグでは表現されていないことです。emタグとstrongタグが使われます。なぜでしょう?


<em>−HTML5タグリファレンス
<em>タグは、強勢する(アクセントを付ける)箇所を表す際に使用します。<em> 〜 </em>入れ子にすることで、 コンテンツの特定個所が持つ強勢の度合いを指定し分けることができます。同じ文でもど...

実は「アクセントを付ける」が本来の意義です。emは書体タグではありません。少し心理的なもの。書き手がその部分に特別な思い入れをしている。それを表現する手段としてemタグが使われます。イタリックを使う必然はない。見えない「思い」を見せる算段です。

これは「話し言葉」と「書き言葉」の違いですね。話し言葉の場合、そこに情感を込め、語気を強めたり弱めたり、スピードを落としたり、イントネーションを変えたりできる。「話し方」という、別の情報を付け加えることでニュアンスを伝えることができます。

それに対し、書き言葉は読み手に「読み方」を託します。どういうスピードで読むか、どこを強めるかは書き手にコントロールできない。だから「誤読」も生じます。それに対する、ささやかな抵抗が「強調」というわけなのでしょう。書き手が読み手に注文をつける。

イタリックはどのケースでもイタリックになります。でもemタグは違う。メディアに応じ、別の強調方法を使って良いのです。たとえば、視覚障害者のための読み上げソフトを作るなら、emタグのところだけ少し声を大きくしてもいい。タメを作ってもいい。どんなニュアンスを付けるかは表現装置に委託されます。


Markdownはテキストの楽譜である

視覚障害者だけではありません。これからの電子デバイス環境、ウェアラブルコンピューティングも考えなければなりません。Apple Watch のように身に付けるデバイス。人とのやりとりが「声」に移行していく可能性があります。音声で問い掛け、音声で返答が来る。

emタグに心理的意味合いが付いたのには、深い事情があるように思います。この定義はHTML5になってから。HTML4だと、emもstrongも「強調」とされています。HTML5になって、emは「強勢」、storngは「重要性」を表すことになりました。情緒的な要素を絡めている。それはWebドキュメントが、視覚的に表示されるだけでなく、聴覚的にも読み上げられる可能性が出てきたからじゃないか。「どう読むか」を伝えるためのタグ。

たぶん、楽譜における強弱記号のようなもの。ピアニシモとかフォルテとか、作曲家が演奏の仕方を楽譜の中に書き込んでおく。録音技術のなかった頃、楽譜に書き込むしか「音楽」を伝えるすべがなかった。オーケストラで演奏するとき、自分の思い浮かべたものを出来るだけ再現してほしい。そういうわがままな気持ちを五線譜の上に「ff」と書く。emタグやstrongタグはそのテキスト版です。

Markdownで「**」も「__」も同じstrongというのはおかしな話です。強調を表す書式は一つだけでいいのに、複数用意されている。これは将来を見越して、情緒的なニュアンスを伝えるタグが増えたとしても、Markdownで書き分けることが出来るよう、記法を予約している気がする。だって、情緒が「強勢」と「重要性」の2つなわけないもの。「(ドヤ顔で」とか「(震え声で」に当たるタグが、HTML6あたりで出てくるんじゃないかしら。


MathJaxアクションを修正しました

とりあえずTextwellでは色を付けることにしました。つまり下記のように書くと:

*イタリック*や**ボールド**で強調する
こんな風に表示されます。

イタリックボールドで強調する

ほら、「特別な思い」が込められていますw。


Textwell 1.4.1
分類: 仕事効率化,ユーティリティ
価格: \360 (Sociomedia)

Markdownを書き出すとき、emタグやstrongタグにstyleを付加します。
Import Textwell ActionMathJax


蛍光ペンで塗ったり、赤ペンで下線を引いたり。ブログの文章でも「思い」は大切です。2通りの強調しかMarkdownにはないけれど、その2つを使い分けて文章にリズムを与えてください。強調は書き手の「声」の代用品です。その「声」が読み手に届くかどうかはこのタグの使い方次第。