SMILE

今日は昔の映画が見ました。『モダン・タイムス』。ここから生まれたスタンダードと言えば:


SMILE
1936 (John Turner & Geoffrey Parsons / Charles Chaplin) Annie Wells


Smile though your heart is aching
Smile even though it's breaking
When there are clouds in the sky, you’ll get by


微笑もう、たとえ心が痛むとしても
微笑もう、たとえ心が壊れそうでも
微笑めば、雲が空を覆っても大丈夫
恐れに震えるときも、哀しいときも
微笑めば、明日の朝の訪れとともに
雲の合間から太陽が差し込んでくる


喜びで顔を輝かせ、悲しみを消そう
たとえ涙が流れ続けるとしても
そのときこそ、微笑みを忘れないで
泣いただけでは何も始まりはしない
微笑めば、きっと、この人生がまだ
素晴らしいものだとわかるのだから


1936年映画『モダン・タイムス』の曲。1954年に歌詞が付けられ現タイトルになった。ということは、歌詞が作られたときチャップリンアメリカにいなかったということ(彼は1952年「共産主義的」の烙印を押され、国外追放されている)。チャップリンが「what's the use of cryin' ?」とか言うかな? それは変だもの。「泣くことが何の役に立つ?」とは言わないだろう。「泣いても良いけれど、微笑んでもみようよ。きっと何かが変わるから」と言いそう。それで訳のほうも、ちょっと変えてみました。
世の中、良いことばかりではない。つらいことや悲しいことのほうが多いだろう。誰が悪いか原因を探しても構わないけど、それだけだったら「自分に出来ること」が何も残らないことになる。深い無力感に落ち込むだけ。よりよい世界を望むなら、自分から行動を起こそう。まず微笑んでみよう。それで自分の「世界を見る目」が変わる。そして、その「微笑み」が世界を変える。1972年、20年ぶりにアメリカの土を踏んだチャップリンは「スマイル」を歌ったと言う。


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starどっしり思い内容。買いですよ。

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たとえ今は壊れそうになっていても、大事なものは失わない。2枚組の1枚は「ビリー・ジーン」や「スリラー」といったヒット曲集ですが、2枚目に「スマイル」が入ってます。永遠の少年マイケルのシャイな笑顔が浮かぶ、心優しいバラード。上で書いた「よりよい世界を望むなら、自分から行動を起こそう」も「マン・イン・ザ・ミラー」の歌詞のなかで、鏡に向かって自分に語りかける台詞。



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いち、に、のサンボーン(って、また同じネタを)。サンボーンも、そう言えば「闘病の人」でした。幼いときに小児麻痺に罹り、そのリハビリのためにサックスを始め、結局それが生涯の仕事に。ポール・バターフィールド・バンドのメンバーとして、あの「ウッドストック」にも参加しています。30歳でソロ・デビューし、6度のグラミー賞受賞。ああ、もう60歳超えてるのか。順風満帆だよなあ。そういう人の「スマイル」。


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star「Careless Love」も相当良かったけど、これは更に・・・

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近所の新譜コーナーで聴いてきた。マデリン・ペルー。ゆったりしてて良い感じでした。日本語版は『幸せになる12の方法』。そのうちの1つが「微笑むこと」ってわけですね。13歳のとき両親が離婚し、アメリカからフランスに移住。「マドレーヌ(madeleine)」を「マデリン」と名乗っているのは、アメリカへの郷愁があるからかも知れない。彼女の「アメリカ」は、この古風なジャズの世界。


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「Triple Scoop」とは三段重ねのこと。ジャマイカ出身のモンティ・アレクサンダー。エラ・フィッツジェラルドの夫レイ・ブラウンジョー・パスとデュオを組んでたハーブ・エリス。この3人で演奏していることに掛けています。要するにオスカー・ピーターソン・トリオが、彼の死を乗り越え復活したアルバム。



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starこれがチャップリンとの出会い
starチャップリンの大傑作。
star失われた人間性・・・

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ドタバタしているだけで、笑えない。テーマを煎じ詰めれば「現代人は、工場か精神病院か刑務所か、いずれかに隔離され監視される」ということ。ミッシェル・フーコーはこれを見て『監獄の誕生』を書いたな。人が人間らしく生きることが出来るのは「家庭」だけ。その「家」さえもボロボロで、「法の名」によって容易に解体してしまう。そこに流れる「スマイル」。絶望のなかで、なおも微笑むことは出来るか。いや、微笑まねばならない。微笑むことは、誰にも奪うことが出来ない、「私」の力なのだから。
まあ、そんなに肩に力を入れなくても、アクション映画として見ても、チャップリンはすごいですよ。刑務所で脱獄犯との乱闘、デパートで目隠ししてのスケート、酒場で群衆に流されるウェイター。さりげなく見せるバランス感覚はジャッキー・チェンを超えています。