KILLING ME SOFTLY

ロバータ・フラックが出てきたので、この曲を調べてみました。


KILLING ME SOFTLY
1971(Norman Gimbel / Charles Fox) Valentin Dojtschinov


Strumming my pain with his fingers
Singing my life with his words
Killing me softly with his song


男性が歌っているのが聞こえてきた
歌に素敵なスタイルがあると思った
私は足を止めてその歌に耳を傾けた
そばで見ると、見知らぬ少年だった


顔が紅潮するのが自分でも分かった
人に見られるのを恥ずかしく思った
彼は私の書いた手紙を歌にしている
止めて、と祈ったが彼は歌を続けた


ギターを爪弾く指が私の痛みを苛む
私の人生を言葉に変えて歌っている
その歌で、私は死んでしまいそうだ
彼は私の生涯を言葉を尽くして語り
やがて私はその歌に魅了されていく


暗い絶望に満ちた、この私の全てを
彼は知っているかのように歌にする
そのとき彼が私のほうに目を向けた
まるで私などいないかのような瞳で


そして歌を続けた、はっきり力強く


訳してみて分かったけれど、これは怖い。隠しておいた自分の秘密を、他人が歌にしている場に遭遇した、ということです。もちろん、相手は自分に気づいていない。それに、本当に自分の手紙を盗み読みされたのかも分かりません。路上ライブをしている若者の歌が、あたかも自分の人生をなぞっているかのように聞こえる。その驚き。戸惑い。そして痛みを分かってもらえた喜び。自分を映す鏡となる歌がそこにある。
邦題『やさしく歌って』。フォーク・シンガー、ロリ・リーバーマンのデビュー曲。彼女がドン・マクレーンの「Empty Chairs」という曲を聴いたとき「これは私のことだ」と思い詩を書き、それをギンベルとフォックスが整え、リーバーマン自身が歌った。2002年映画『アバウト・ア・ボーイ』では、イジメられっ子のマーカス少年が最後に全校生徒の前でこの歌を歌っている。



Killing Me Softly
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リーバーマンの歌はあまり注目されなかったが、飛行機のBGMで流れるこの曲を聴きロバータ・フラックが感銘を受け、3ヶ月かけて新しいアレンジに編曲。それが1973年に全米一位になり、グラミー賞を受賞し彼女の代表曲となった。1996年にはローリン・ヒルのいたフージーズがヒップホップにアレンジし直し、やはり全米一位になっている。時代を超えた名曲。


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ジャコへのトリビュート・アルバム。マーカス・ミラーやボナさんなど、今のベーシストが勢揃い。「やさしく歌って」はジャコがまだウェザーリポートに参加する前、マイアミで活動していた頃の持ち歌でした。それと同時に「彼は私のことを歌ってくれた」という感謝が、アーティストたちにあるのでしょう。ジャケットもジャコ自身が描いたイラスト。


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いつもならトランペットで高音をキンキン鳴らしてるサンドヴァルがフリューゲルホルンで柔らかく吹いています。どれもアメリカを代表する懐かしのポップソングということで「Americana」。ディジー・ガレスピーに魅了されてアメリカに移民してしまった人だから、その人生もまた波瀾万丈。音楽の持つ力は恐ろしい。