YESTERDAY I HEARD THE RAIN

そろそろ6月が終わりますね。梅雨明けも間近かな。


YESTERDAY I HEARD THE RAIN
1967(Gene Lees / Armando Manzanero) Rebecca Parris


Yesterday I heard the rain whispering your name
Asking where you'd gone


昨日の雨は君の名前を呟いていた
君はどこに行ってしまったか、と
柔らかな雨が物言わぬ群衆に降り
その中を僕は宛てなく歩いていた


路上には黒い傘が行き交っていた
後ろから顔無き人々がやってきて
通りすがりに僕を覗き込んでいく
でも誰一人見知った顔はなかった


僕は目を閉じて空へと顔を向けた
雨が僕の身体を洗い流したものの
宙に浮かぶ君のイメージは消えず
むしろ炎より明るく輝いて見えた


昨日街は無情の影に覆われていた
ただ穏やかな雨だけがいつまでも
君の名を、その名前を呟いていた


また、雨に濡れている人が一人。しかも幻聴と幻覚に襲われています。その様子に心配した通行人が覗き込んできますが、それは「僕」が「君」を捜して他の傘を覗き込んでいたからでしょう。しかもずぶ濡れのまま。失恋した日には雨が降る。それで「フラれる」と言うのでしょうか。
邦題『雨のつぶやき』。メキシコの作曲家アルマンド・マンザネロが1967年に作ったボレロ「Esta Tarde Vi Llover」が原曲。「今日の午後、雨が降るのを見た。人々が駆け去るのを見た。歌っている海を見た。でもどこにも君の姿はなかった」。翌年このボレロジーン・リーズが英詩を付けたところ、アメリカでもヒットした。Esta Tarde(今日の午後)と発音が似てるからYesterday。ダジャレ。


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Essential Tony Bennett (Remastered)TONY BENNETT

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アメリカでヒットさせたのはこの人。ボレロはスペインからキューバに伝わり発展した音楽で、しかもメキシコはキューバ危機以降もキューバとの国交を維持した国。その音楽を60年代に紹介するのは危険なことだったろうと思う。イタリア系移民として苦汁を舐め、南アフリカアパルトヘイトにも反対してきたトニー・ベネットの哀しみ。


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The Tokyo ConcertBill Evans

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star緊張感あふれます
starインタープレイの応酬が繰り広げられています
starちょっと違うビルの演奏をどうぞ

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ベーシストのエディ・ゴメスがプエルトリコ出身。プエルトリココロンブスが発見した島で、長い間スペインからの独立戦争を続け1898年に自治権を獲得。でもすぐアメリカに占拠され合衆国領。しかも選挙権が認められていない植民地扱い。スペイン語が話されるこの島で育ったゴメスにとって、この曲には複雑な想いがあったと思う。


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My Passion for the PianoArturo Sandoval

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starほとばしる情熱
star本業じゃなくてもこの出来栄え
starハマりました。

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そしてキューバから亡命してきたサンドヴァル。本場のボレロを聴かせます。でもいつものキンキンに高いトランペットではなく、このアルバムではピアノ。けたたましいだけがラテン音楽ではありません。物思いに沈む柔らかな「雨のつぶやき」も、ラテン音楽のもう一つの顔。


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Land of the SunCharlie Haden

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star大好き!
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「音楽で世界平和」の人チャーリー・ヘイデンは1986年ハバナのジャズ・フェスティバルに参加。そこでキューバの若手ピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバを発掘してきます。国交断絶もモノともせず、アメリカ政府にルバルカバの居住権を認めさせ、キューバの「現在」を世界に発信。ただ、このアルバムでは「メキシコ」に焦点を当てています。アルバム名の『太陽の国』もメキシコのイメージ。タコスとサボテンの国と思ってもらっては困る。