FOGGY DAY

一日暖かく良いお天気でした。こんな日が続くと突然冬になるからなあ。


FOGGY DAY
1937(Ira & George Gershwin) Verve Extract


A foggy day in London town
Had me low, had me down


僕はこの街にとって異邦人だった
この街には誰も知り合いはいない
僕は自己憐憫か何かを感じていた
何をすれば良い? 何をすれば?


お先はまったく憂鬱な暗闇の中で
僕は一人霧深い通りを歩いていた
そこに幸運があることを知らずに


霧に包まれたロンドンでのある日
僕は落ち込んでいた、凹んでいた
朝景色はなぜか不安を掻き立てて
大英博物館も色褪せて見えていた


こんなことがいつまで続くんだ?


でも奇跡の時代は終わっていない
突然君が僕の目の前に現れたんだ
ロンドンを包み込む霧を突き破り
太陽があらゆるところを照らした


秋と言えば霧。でもロンドンの霧は一年中出ているそうです。それは、産業革命によるスモッグが原因。ロンドン周辺に工場がひしめき、石炭を焚いて蒸気で機械を動かしてきた。そのため空気が汚れてしまい、空気中の水分が霧状になりやすい。「霧の都」と言いながら、人工的な理由で起こっていたんですね。
邦題『霧深き日』。1937年ミュージカル映画『踊る騎士(Damsel in Distress)』の挿入歌。城の中庭が霧に包まれたシーンでフレッド・アステアが歌う。ロンドンの古城には昔から言い伝えがあり「城の窓から飛び降りて無事だった者は、その城の令嬢と結ばれる」とされていた。それを知らずダンサーのアステアが飛び降りてしまったため、伯爵の娘と祝言を挙げることになるコメディ。残念なことに、作曲したジョージ・ガーシュインはすでに脳腫瘍に罹っていて、この映画の封切りを待たずに亡くなっている。

ヘイゼル・スコットのピアノ弾き語り。ベースがチャールズ・ミンガス


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ミンガスと言えば、直立猿人。キーキー叫び声を上げる猿が二足歩行を始め、未来への希望に満ち溢れていくコンセプト・アルバム。1956年。これに「霧深き日」が出てくる。人類が到達した近代都市ロンドン。曲に合わせ、警官の笛や車のクラクションが鳴り響く騒々しい喧噪が重ねられています。いったい人類の進歩とは何だろう? 果たして「サル」のレベルから離脱できたと言えるのだろうか?


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starまずこの一枚。

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同じ1956年。まだマイルス・グループに在籍していたレッド・ガーランド。初のリーダー・アルバムです。こちらのロンドンはお洒落な都会のイメージ。どうやらマイルスがマラソン・セッションに「霧深き日」を入れるつもりだったのを、レッドに譲ったらしい。セント・ルイスのライブではマイルス自身がトランペットを吹いています。レッドもお気に入りらしく、その後のライブでは必ず演奏されています。


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こちらも初リーダー作。1955年のキャノンボール・アダレイ。それまでフロリダで音楽教師をしていて、心機一転ニューヨークに出てきての吹き込みです。「この街では異邦人」。でも、この表情を見ると結構楽しんでそうですね。曲のほうにも、そんな気持ちが漂って、美しいバラードになっています。この演奏をマイルスに気に入られ、クインテットに加入。キャノンボールの名前を知らない人はいないようになりました。


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なにしろ「あなたに会えて良かった」という歌ですから、ボーカルはこの二人のデュエットで決まりでしょう。これも1956年。エラ&ルイ。なんだろう? 1956年にロンドンで何かあったかなあ?


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月日は流れて1985年。18歳でジャズ・メッセンジャーズに参加したウィントン・マルサリスもこのとき23歳。数あるスタンダードを新しい感性で料理している。ガーシュインの曲として「霧深き日」を選び、古きを温め新しきを知る、彼らしい明るさに仕上がっています。ピアノのマーカス・ロバーツが入れる合いの手が不思議な煌めきを添えている。グラミー賞受賞アルバム。