フレディ・ハバード逝去

昨年末、12月29日にトランぺッターのフレディ・ハバードが亡くなられました。心臓発作により享年70歳。ご冥福をお祈りします。

やはりVSOPのメンバーとしての活動時期。ハービー・ハンコックやロン・カーター、ジョー・ヘンダーソン、トニー・ウィリアムズといった後の大御所たちも「新しい流れを作り出してやる」と意気込みに燃えていた。今のスムーズ・ジャズはまだ、この枠から外には出ることが出来てないのかも知れません。

オープン・セサミ+2
	フレディ・ハバード ティナ・ブルックス マッコイ・タイナー EMIミュージック・ジャパン 2008-01-23 売り上げランキング : 47759 おすすめ平均 才能のかたまり 才能のかたまり Amazonで詳しく見る by G-Tools

1938年４月７日生まれ。十代からインディアナ・シンフォニー・オーケストラで働き、ウェス・モンゴメリーとも共演している。二十歳になってニューヨークに上京。ソニー・ロリンズやエリック・ドルフィーのサイドメンを務め、２年後にリーダー作をブルーノートから出します。ピアノがマッコイ・タイナー、サックスがティナ・ブルックス。ブルーノートのアルフレッド・ライオン社長らしい、無名の新人たちの起用。きっとこの中から次世代を担うアーティストが育つはずだ。そして、その通りになりました。

Free Jazz (A Collective Improvisation)
	Ornette Coleman Double Quartet Warner Jazz 1987-10-27 売り上げランキング : 78032 おすすめ平均 百花繚乱のワンネス 偉大なる実験 まさにフリージャズの傑作 Amazonで詳しく見る by G-Tools

まず彼に注目したのがオーネット・コールマン。1960年このフリージャズの旗頭のもとエリック・ドルフィーやチャーリー・ヘイデンらとともに新鋭のトランぺッターとしてフレディが名を連ねてます。そして次にアート・ブレイキー。ジャズ・メッセンジャーズの新メンバーとしてウェイン・ショーターとともに加入し、『Mosaic』などの名盤を残しています。

エンピリアン・アイルズ+2
	ハービー・ハンコック フレディ・ハバード ロン・カーター TOSHIBA-EMI LIMITED(TO)(M) 2007-06-20 売り上げランキング : 104232 おすすめ平均 過激でスリルに富んだ最良の新主流派ジャズ フレディ、フレディ、フレディ！！！ 昔も今も愛聴盤 Amazonで詳しく見る by G-Tools

そして1964年VSOP。正式なVSOPはショーターの加入からですが、すでにサウンドとしては始まっています。『処女航海』の前年に出た『エンピリアン・アイルズ』。「カンタロープ・アイランド」の病みつきになりそうな繰り返し畳み掛けるフレーズ。フリー・ジャズでもハード・バップでもない。新しい音楽の予感をさせている。
ちなみに「VSOP」は、1976年ニューポート・ジャズ・フェスティバルにマイルス・クインテットが再結成して出演する際、マイルスが体調を崩し、代役としてフレディがトランペットを吹いたことに始まります。Very Special Onetime Performance。「たった一度限りの演奏」。このメンバーはもうないだろう、と。でもあまりの人気にその後もワールド・ツアーも行ったりして「一度限り」ではなくなってしまいました。

レッド・クレイ
	フレディ・ハバード ジョー・ヘンダーソン ハービー・ハンコック キングレコード 2006-11-08 売り上げランキング : 38191 おすすめ平均 まさに渾身の１曲「Red Clay」 子供に大うけ 結構いいです。 Amazonで詳しく見る by G-Tools

また作曲家としても才があり、彼の代表作である「Red Clay」が収められている1970年アルバム。渾沌としたオープニングから、テンポよい８ビートに合わせ行進曲のように演奏が進んでいく。ハンコックのエレピのソロの後、フレディが饒舌なほど吹きまくり。「赤い泥」とはなんだろう？　どうもこの曲、ベトナム戦争と重なる。1970年アメリカ軍によるカンボジア侵攻の年。終わらない「赤い泥」。
1978年にはビリー・ジョエルの『52nd Street』に参加しアルバムがグラミー賞を獲ってもいますが、1990年代からは体調を崩し、音楽活動を半ば中止している状態でした。