タルコフスキー監督映画『殺人者』

ちょっと、そこの人! 良い映画、入ってますよ。


『殺人者』前編


『殺人者』後編

20分ほどの短い作品です。ロシアの映画監督アンドレイ・タルコフスキーが大学生のときに作った自主制作映画『殺人者』。1958年。ある晩レストランを訪れた二人の黒尽くめの男と、そこの店主とのやりとりを描く。二人はある男の殺害を計画していると言う。レストランのドアが開き、次々と客がやってくる。目的の男は今晩このレストランに現れるのだろうか・・・。
後半の最初で「バードランドの子守唄」を口笛で吹いている客がタルコフスキー自身。これを口ずさんでると、ロシアでは「アメリカ人」と見なされるわけだな。小窓越しに交される会話、鏡に映る相手の横顔、無駄に強調される影。このときからタルコフスキータルコフスキーです。
 バードランドの子守唄: http://d.hatena.ne.jp/wineroses/20070127


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star「マッチョさ」とかけ離れた短編集
star短編小説の名手でもあったヘミングウェイ
star鮮やかに立ち昇る感情

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原作はこの短編集に収められている『殺し屋』。1926年作品。ニック・アダムズという若者を巡る、さまざまなエピソードが積み重なり、一つの世界を形成している。だから、1つの作品だけでは何も完結しない。ハードボイルド作家としてのヘミングウェイをご堪能あれ。
 『殺し屋』日本語訳: http://f59.aaa.livedoor.jp/~walkinon/killers.html


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starレーガン元大統領も出演---役者には向いていないかもと思った作品
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アメリカの映画では、レーガン元大統領も出てます。1964年。


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starタルコフスキーの最高傑作ですが・・・
star魂の解放から、魂の拡大へ。
star内的必然性から生まれる独自性

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湯治に訪れた旅先で狂人から一つの「約束」を渡される。「世界を破滅から救うには、蝋燭の火を消さずに対岸まで運べば良い」。そんなことに何の意味がある? 詩人アンドレイは思う。しかし、その彼もいつしか考えを改めるようになり・・・。
タルコフスキーで一番美しい映画がこれだと思う。一場面一場面を静止画にすれば、そのまま芸術作品になってしまう美学。お金をかけたセットではない。自然が、ほんのわずかな隙を見せてしまう瞬間を切り取ってくる。火、水、泥、光。映像美の極致にある作品です。ストーリーは後回し。
でも考えてみると『殺人者』からこの『ノスタルジア』まで、なんか一貫したテーマがあるように思います。「世界の破滅への予兆と、それを防ごうにも防ぐ手段を持たない人間の無力さ」。何かしないといけないけれど、その「何か」が絶対的に自分には無い。現代人の置かれている「状況」を言い当てているのだと思う。だから、主人公たちは「何か」をする。たとえそれが自滅的な行為であっても、誰も理解してくれないにしても、その「何か」が「世界の破滅」を遅らせてくれるかも知れないから。そうした、無名の英雄たちの物語。


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