LEFT ALONE

この連休は、去り行く「夏」の整理のために。


LEFT ALONE
1959(Billie Holiday / Mal Waldron) Abigail Riccards


Where's the love that's made to fill my heart?
Where's the one from whom I'll never part?


私の心を満たしてくれる愛はどこにある?
私から離れることのない人はどこにいる?
あの人たちは私を傷つけ、見捨てていった
私は取り残される、ひとり孤独を背負って


「私の居場所」と言える家はどこにもなく
もう二度とさ迷い出さずに済む場所もない
小さな町でも大きな街でも、哀れなことね
私は取り残される、ひとり孤独を背負って


「探したら良いじゃないの」、誰もが言う
でも今まで、そんな方法さえなかったのよ


とうの昔にその人とすれ違ってたのかもね
それとも死ぬまでに二人は出会えるのかな
互いの心を開き合える人、でもそれまでは
私は取り残される、ひとり孤独を背負って


最近「婚活」という言葉に驚いています。世の中が「売り買い」のメタファーで語られるようになった。セールスポイントをアピールして自分を売り込む。自己を商品化する思想、商業化社会。みんなが「あきんど」。そうやって作られる「家庭」って何でしょう? もっと「運命の出会い」を信じたら良いのに。
ピアニスト、マル・ウォルドロンの作曲。マルは1957年からビリー・ホリデイの伴奏を務め、敬愛する彼女に贈ったのがこの曲。淋しく冷たい歌詞を彼女が付け「レフト・アローン」というタイトルになった。生前ビリーも歌ったらしいが録音はなく、1959年彼女の死後、マルが彼女を偲びレコード化したものが初演となっている。でもこの曲、女性にプレゼントするには暗すぎますよ>マルさん。

おや、ケニー・ギャレットのがある! 1991年ブルーノート東京にて。ピアノは大西順子です。
 公式サイト: http://www.kennygarrett.com/


レフト・アローン
レフト・アローンマル・ウォルドロン マル・ウォルドロン・フィーチャリング・ジャッキー・マクリーン

EMIミュージック・ジャパン 1999-10-27
売り上げランキング : 65188

おすすめ平均 star
star魅惑の万華鏡
starレディ・デイ存命中の録音で哀悼盤とは???,
starマックリーンの泣きのアルトとマルの孤独感

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
ジャッキー・マクリーンのサックスがむせび泣く。もう、それだけで出来てると言っても過言ではないアルバム。マルさんのピアノはあまり目立たない。演奏自体はビリー・ホリデイが生きてるときのものなので、別にマルさんが落ち込んでたわけじゃないだろうけど。彼女の死後マルさんはしばらくエリック・ドルフィーと活動を共にしてから、1965年ミュンヘンへと旅立っていきます。


Far Cry
Far CryEric Dolphy Quintet with Booker Little

Prestige 1991-07-01
売り上げランキング : 64020

おすすめ平均 star
starジャズファン必修科目!
star人間の記憶のリズム感の極地

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
マルさんと出会う前からドルフィーは「レフト・アローン」が好きだったらしい。1960年に既に最初の演奏をしている。その後フルートを持てば必ず「レフト・アローン」を曲目に入れています。このアルバムはブッカー・リトルと最初に組んだ作品。ロン・カーターのベース、ロイ・ヘインズのドラム。ドルフィーのフルートは、日本の横笛のように幽玄だと思う。あまりアメリカ的じゃないんだよなあ。


Straight Ahead
Straight AheadAbbey Lincoln

Candid 1988-08-01
売り上げランキング : 131644

おすすめ平均 star
starストレート・アヘッド

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
マル・ウォルドロンエリック・ドルフィーブッカー・リトルコールマン・ホーキンスマックス・ローチ。なんて豪華なメンバーが集まってるんだ! その中で歌うアビー・リンカーン。1961年。とても堂々としています。この曲は孤独を負う者だけど、その孤独に屈してはいけない。極限まで磨き上げられた「レフト・アローン」。


The Billie Holiday Songbook
The Billie Holiday SongbookTerence Blanchard

Columbia 1994-03-29
売り上げランキング : 406098


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
1962年3月13日生まれのテレンス・ブランチャード。つまり、ビリー・ホリデイを「知らない」世代。その彼がビリーの持ち歌をトランペットで吹き込んでいます。1993年。これが良い。都会的な感覚と泥臭さとが調和している。二十歳のとき、脱退したウィントン・マルサリスの代わりにジャズ・メッセンジャーズに抜擢され、その後スパイク・リー監督と活動を共にした人。あの『マルコムX』音楽監督です。黒人のルーツを探し求める音楽家ビリー・ホリデイを避けて通れません。
 公式サイト: http://www.terenceblanchard.com/