BEGIN THE BEGUINE

8月最後の日曜日。去年、こんなに暑かったっけ?


BEGIN THE BEGUINE
1935(Cole Porter) Ebony & Ivory


When they begin the beguine
It brings back the sound of music so tender


ビギンの演奏が始まると
やさしい音楽が記憶に戻ってきます
輝き満ちた南国の夜の光景が浮かび
思い出が色褪せぬままに甦るのです


ビギンの演奏が始まると
私の隣にあなた、星空に二人がいて
オーケストラのいる浜辺に降りると
椰子の木が風に吹かれ揺れ始めます


あの日を呼び戻すのは余りに容易く
ただその曲の調べに身を委ねるだけ
二人がいる、永遠の愛を誓いながら
もう離れたりはしない、いつまでも


神々しく、安らかな瞬間
でも急に雨雲が立ちこめ演奏は中止
せっかくのチャンスがふいになって
我が身の不運を嘆いたりもしました


だからビギンは止めて下さい
残り火のままに留めておきたいから
この想いを静かに眠らせてあげたい
ビギンを聴くと甦るこの想いだけは


なるほど、この曲って「ビギンは聴きたくない」だったんですね。ビギンは、カリブ海マルティニーク島のダンス音楽。ということはバカンスでカリブに行って、そこで巡り会った恋。ロマンチックな気分になってるところに雨が降ってきて、中途半端な想いのまま現実に帰ってきた。すると、こうなっちゃうんでしょうね。「あーあ、素敵な恋に発展しそうだったのに」。それ、美化し過ぎですよ。
フリオ・イグレシアスを思い出すと年齢がバレそうですが、正真正銘コール・ポーターの曲。1935年ミュージカル『ジュビリー』でジューン・ナイトが歌った。1930年代フランスでビギンが流行し、それをパリのリッツ・ホテルで見たポーターが即興で作曲。ミュージカル自体はそれほどヒットしなかったものの、1938年アーティ・ショウ楽団がレコード化したところ大ヒットになった。ポーターの自伝映画『De-Lovely』にも使われている(YouTube)。


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South of the Border: Verve Latin Jazz SidesCharlie Parker

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starこういうパーカーもいい

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晩年のチャーリー・パーカーラテン音楽に興味を持ち、積極的に取り入れようとしていた。1952年の作品。マルティニーク島は、黒人解放運動家フランツ・ファノンを産み出した地。黒人差別の激しい地域である。パーカーは「ビギン」にどんな想いを寄せていたのだろう。


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starまさに円熟期

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マルティニーク島はフランスの植民地で、何度も独立を試みながら弾圧されてきた。フランス人にとっても複雑な想いを抱かせるのが「ビギン」。ジャンゴ、1950年のローマ公演。録音は悪いけれど、ギターでジャズを語るなら、この一枚は外せない。


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Begin the Beguine: Jazz in FranceHenri Crolla

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ジャンゴが1954年に亡くなったあと、フランスのジャズ界を受け継いだのが実力派ギタリスト、アンリ・クローラ。イヴ・モンタンの伴奏として来日したこともある。美しいフレーズで彩られるスタンダードの数々。しかし6年後、40歳の若さで惜しまれながら他界している。


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フランスのものはフランスに。ジャズ・スタンダードをフランス語で歌い上げるローラ・フィジィ。2007年。母親がエジプトの方で、エジプトはナポレオンの時代からフランス語を共通語としているため、ローラさんの母語もフランス語なんだそうです。ハスキーでエキゾティックな「ビギン・ザ・ビギン」。ここにもポストコロニアリズムがある。
 http://www.laurafygi.com/


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10月来日予定のビージー・アデール。73歳になるのに、まだまだお若い。美しくてうっとりするようなピアノ・トリオを聴きたかったら、これに決定。コール・ポーターの代表作が優雅に、情感たっぷりに演奏されています。
 http://www.beegieadair.com/