iOS7は失敗に終わってもWebデザインを革新する呼び水になる

期待のiPod touch新型の発表は無し。



新しいOSXの壁紙、ダウンロードできます。Mavericks。「焼印の押されてない仔牛」という意味。ライオンからウシだもんなあ。どういうニュアンスなんだろう?
(追記) Mavericksはカリフォルニアの地名でした。サーファーのメッカ。この壁紙は「波」を表現している訳か。下請け工場を中国からアメリカに戻し「地域密着型企業」をアピール。意外と「反グローバリズム」がこれからのメインストリームかも。



Apple Introducing iOS 7 - Official Video
iOS7の機能は動画で確認。ジョナサン・アイヴのTシャツが気になります。股引きを履いて、団扇片手に将棋でも打ってそうな格好。お給料もたくさんもらってるだろうに、もうちょっとマシなの無かったのか。ファッションをフラット化するとこうなるの典型?


そんなわけで、iOS7は「涼しい」。夏のデザインだと思います。秋では遅いんじゃないでしょうか。奥行きのある壁紙。脱獄系アプリの統合。本当の意味でのマルチタスク。「新しい」よりは、これまで避けてきた機能を盛り込んでいる。Cool です。Cool というのは、ユーザーからの能動的なアクションを要求する。使い手を選ぶ。だから避けてきた。
SBSettingライクなコントロール・センターは、下から引き出すことで各種設定にすぐアクセスできる。WiFiBluetoothの切り替えが簡単になるでしょう。AirDropの対応は、画像やファイルの受け渡しを根本から変えてしまいます。どれも今すぐ欲しい機能ですが、「一般ユーザー」の求めるものかと言えば違う。「知らないと使えない道具」は「知ろうとする人たち」でなければ使いません(このマルチタスク画面は直観では出せないと思う)。
Cool なデザインの特徴は、操作が視覚的な「ボタン」ではなく、動作としてのジェスチャで拡張されていることです。マルチタスクの削除が、上方向へのスワイプで投げ捨てる方法になっている。タッチスクリーンの特性を最大限に活かせば、こうしたジェスチャの多用が筋道です。たぶん、これまで発表されているアプリの中には、動かなくなるのも出てくるでしょう。内部でのバッティングは必至。SDKも大幅に変わってそうだから、その調整に時間がかかる。それで、正式公開が秋なんでしょうね。サードパーティ製アプリのチェックがこれから地獄になるんだろうなあ。新しい発想をiOS7は要求してくる。



Apple ad: Designed by Apple in California
そして、実際にiOS7が動き始めたとき、その環境で見る「インターネット」も同じデザインを採用してくる。フォントが細くなって、ボタンが平らになるのは当たり前。見てる箇所に応じて動的にメニューが変わり、スワイプで画面を開けたり閉じたりする。スマホ用のページのあり方が変わる。すると、今までなかった表現を発見するWebデザイナーが現れ、ユーザーからのアクションを要求する Cool なデザインが隠され始める。
ここには「未来」があります。でも、「わからない」で立ち止まってしまう人たちにも使えるデザインでないと広まらない。アップルのOSはずっとギークでありながら、シンプルで取っ付きやすい部分をきちんと用意してきた。でも、このiOS7は分からないですね。ジェスチャ駆動のデザインは目に見えない。見えないものに気づかせるためには、そのためのトリガーである「アフォーダンス」を準備する必要がある。それがiOS7についているのか。もしあるとしても、それを真似るWebデザインにも伝わるかどうか。
これまでにはなかったデザインなので、iOS7は「失敗」に終わるでしょう。けれど「ユーザーからジェスチャを引き出すデザイン」についての知見は深まる。そこからだろうなあ、「なるほど、これが21世紀か」と実感できる世界が広がるのは。
http://www.apple.com/ios/ios7/


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作者: 宮澤 淳一
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メディアを Hot と Cool に分け、それぞれの特性を分析し、インターネットの到来を予言した哲学者。マクルーハンの発想は道具を「人間の身体の拡張」と捉えるもので、電話やテレビの発明に「頭蓋骨から引き出され、引き伸ばされた神経細胞」を見ている。その「神経細胞」が地球を覆うとき、人類の感受性のあり方も変化していく。
21世紀初頭までの変化は言い当てられたが、さて、中盤に入ってからはどうか。