LITTLE GIRL BLUE

さすが三月。油断して、通り雨に降られました。


LITTLE GIRL BLUE
1935(Lorenz Hart / Richard Rodgers) Clockwork


Sit there and count your fingers
What can you do old girl you're through


ぼんやり座りながらただ指折り数えているだけ
自分に何が出来るのだろうか、ただそれだけを
指折り数えるしかない、不幸な少女の哀しみを


ぼんやり座りながらただ雨滴を数えているだけ
自分に降り掛かる雨の数を、もう気づくべきだ
自分に出来ることは雨を数えるくらいなのだと


何をしても無駄だよ、君は打ちのめされている
その望みは痩せ細っていく、ああ、誰かここに
哀しみを知る少年を連れてきてくれないものか


本当に落ち込んでいるときは、こんな感じだろうか。命令文で書かれてますけど、自分への命令ですよね。何かしなくちゃ、と思いながらも、何もできない。立ち上がれない。雨に濡れながら、泣くに泣けない。こんなとき、周りに出来ることも何もない。励ましても慰めてもムダ。ただ、同じ哀しみを知る人間がそばにいてくれること以外には。
1935年ミュージカル『ジャンボ』でグロリア・グラフトンが創唱した。34万ドルも掛けて作られたミュージカルだったが、世界的な不況のため人気が出ず、5ヶ月で打ち切られている。なにしろ二つのサーカス団の抗争を描く作品でアクロバットのシーンも多く、主人公が象のジャンボくんなのでお金がかかる。「マイ・ロマンス」もこのミュージカルの曲。1962年にはドリス・デイ主演で映画化されヒットした(ドリス・デイが象なのではないよ)。



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誰もがジャニスの曲だと思ってしまうのも仕方ないこと。パワーが違うでしょ、パワーが。しかも「哀しみを知る少年」なんて出して来ない。ただ、指を数えろ、雨を数えろ、と歌う。そして最後にアドリブで「その気持ちは、私も知っているから」と付け加えてくれるから、これで良いんです。


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star若鯉のように勢いの良いモブレーのテナーを聴いとくれ

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パワー負けしてはいけないので、ハンク・モブレー。とはいえ、彼のサックスはブルージーアート・ブレイキーと組んでいたジャズ・メッセンジャーズが解体した1956年。アルバム・タイトル「メッセージ」にメッセンジャーズへの想いが籠る。これ、そう見ると「リトル・ガール・ブルー」だけ他のホーンが入ってない理由がありそう。でも、数年後にまたブレイキーと仲直りしてるんですけどね。


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不幸の塊みたいなフィニアス・ニューボーン。手にケガをしたり、うつ病になったりして、きちんと活動できた期間が少ないため、才能がありながら評価がついて来なかった。それでもミュージシャン仲間では理解されていて、このアルバムでもエルヴィン・ジョーンズレイ・ブラウンが参加し、ピアノ・トリオを組んでいます。1969年。リズム感が違います。悲しい曲なのに力強くスイングしている。



Little Girl Blue
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starニーナの最高傑作というよりは

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忘れてならないのがこれ。ニーナ・シモンの1958年デビュー・アルバム。ジュリアード音楽院でクラシックを学びながらも、貧しい家族のために夜はクラブでピアノを弾き生計を立てていた。彼女ならそれを「不幸」と呼ばないかも知れない。だって、どの世界にいても自分の音楽を引き出せるのだから。ジャズでもない、クラシックでもない、ニーナだけの音楽。それが「リトル・ガール・ブルー」。ピアノが奏でているのはクリスマス・キャロル「慈しみ深き王ウェンセスラス(Good King Wenceslas)」。そこに歌詞を重ね、美しい祈りの空間が生まれている。

 公式サイト: http://ninasimone.com/