MY SHINING HOUR - W&R : Jazzと読書の日々

そうか、夜の間に免疫力が回復するのか。起きてちゃダメだそうだ。これは早く寝ないと。

MY SHINING HOUR
1943(Johnny Mercer / Harold Arlen) Lukasz Jarochowski

This will be my shining hour
Calm and happy and bright

これこそ私にとって貴重な時間
静かな幸せと輝きに満ちた時間
夢にあなたが現れ満開の笑みで
この夜の闇を打ち破ってくれる

目の前に故郷の明かりを広がり
天使が私を見守ってくれている
そんな気分になれる大切な時間
あなたと過ごせる日が来る迄は

「a shining hour」は「時間の有効利用」のこと。戦時中は「時間を無駄にするな」というニュアンスで使われていたのでしょう。この曲は、それを逆手に取っている。何をしてるかといえば、寝てるわけです。寝て、夢を見て、その夢の中で故郷に帰り、あなたと一緒に過ごしている。「本当に大事な時間って、そういうことじゃないの？」という、アイロニーが混じった反戦の唄。
1943年フレッド・アステア主演映画『青空に踊る(The Sky's the Limit)』でジョーン・レスリーが歌った。アステアは戦闘機乗りの空軍少尉。せっかくの休暇もパレードで忙しくてやってられない、ってことで身分を隠し、街をぶらぶらしていたらレスリー演じる雑誌カメラマンと遭遇。例によって一目惚れして、踊りながら付きまとう話。でも映画の最後で、戦地に向かうアステアに再会の約束をし、レスリーは一人残されることになる。アカデミー主題歌賞にノミネートされた。

ニールス・ペデルセン・トリオの「マイ・シャイニング・アワー」。初めのメロディを聞き逃すと、何をやってるか分からない。

Duo 2
	Kenny Drew SteepleChase 1994-07-27 売り上げランキング : 158247 おすすめ平均 ??????????????? じっくり聴いて、心に効きます。落ち着きます。 Amazonで詳しく見る by G-Tools

ペデルセンにとって「マイ・シャイニング・アワー」は思い出深い曲。1964年、彼が18歳のときケニー・ドリューにスカウトされ、コペンハーゲンの「カフェ・モンマルトル」に出演することになる。ケニー・ドリュー・トリオのベーシストとして。ケニー・ドリューはペデルセンに全面的な信頼を置き、生涯のパートナーにしました。1974年ピアノとベースだけの「Duo」シリーズ。そのときの課題曲が「マイ・シャイニング・アワー」でした。これはその年のオランダ・ライブでも、ケニー・ドリューが亡くなる前のイギリス・ライブでも取り上げられました。ケニー・ドリューの愛した曲。ペデルセンにとって「輝く日々」の曲。

A Jazz Date with Chris Connor/Chris Craft
	Chris Connor Rhino 1994-08-09 売り上げランキング : 202450 おすすめ平均 MOON RAY Amazonで詳しく見る by G-Tools

どんなに素晴らしい時間であっても「本当はあなたがいなくて淋しい」という切なさを込めないとこの歌は生きてきません。ベツレヘムからアトランティックに移籍したクリス・コナー。1950年。全盛期ですから「私の輝ける時間」を歌います。戦時中の唄をそのまま歌えば、ただの懐メロです。だから微妙に音をズラし、自分の息づかいを乗せています。曲とともに物悲しさが残る。この切なさは、時代を超えて誰の身にも感じられるもの（試聴はこちら）。

Coltrane Jazz
	John Coltrane Warner Jazz 2008-01-13 売り上げランキング : 26360 おすすめ平均流麗なLike Sonnyが好きだ。 Amazonで詳しく見る by G-Tools

1959年やっぱりアトランティックに移籍した、今度はコルトレーン。マイルスの『カインド・オブ・ブルー』に参加し、モード奏法を身につけた彼は、アトランティックに移ってからもその実験を続け、最初のアルバム『ジャイアント・ステップス』を出します。しかし、これが自分のスタイルなのだろうか。次の『コルトレーン・ジャズ』でも、さらにモード奏法を磨いていく。ウィントン・ケリー、ポール・チェンバース、ジミー・コブという鉄壁のリズム・セクションに支えられ、彼は彼らしくなっていきます。でも「Like Sonny」のように、ソニー・ロリンズを意識した曲もあり、彼の向上心は欲深い（試聴はこちら）。

Sensitive to the Touch
	Jay Leonhart Lrc Ltd 2001-07-03 売り上げランキング : 198711 おすすめ平均掘り出し物、お勧め！ Amazonで詳しく見る by G-Tools

レイ・ブラウンを敬愛するベーシスト、ジェイ・レオンハート。スタジオ・ミュージシャンとしての下積みの長かった人で、フランク・シナトラからオジー・オズボーンまで、共演したミュージシャンは数知れず、ナショナル・アカデミーから３度「最優秀ベーシスト」に選ばれている。リーダー作を出してやっと「輝ける時間」になったのか、って？　たぶん「下積みをしていた頃も私は輝いていたよ」と答えてくれそう。特にこのアルバムは前向きな内容の曲が並んでいて、レオンハートさんのポジティブさが伺われます。