ON THE SUNNY SIDE OF THE STREET

晴れたら散歩(前回分はこちら)。


ON THE SUNNY SIDE OF THE STREET
1930(Dorothy Fields / Jimmy McHugh) Ernesto Acher


Grab your coat and get your hat
Leave your worries on the doorstep


手にするのはコートと帽子で良いじゃん
考え事なんてドアのところに捨ててけよ
ただ通りの日の当たるほうを歩くだけで
人生は満ち足りたものに変わるんだから


ピタパタピタパタって聞こえてこない?
そいつはね、君の歩いている足音なのさ
ただ通りの日の当たるほうを歩くだけで
人生はそんなふうに素敵に出来てるんだ


僕も昔はね、日陰のほうを歩いてたんだ
大勢の人の波に埋もれ俯きながら歩いた
でも、それは違うだろう、恐れはしない
通りを横切り、僕は自分の人生を選んだ


もしもポケットに一銭も入ってなくても
気分はロックフェラーのようにリッチさ
だって、通りの日の当たるほうを歩けば
脚下の埃さえ黄金のように輝き出すから


やっぱりジャズって哲学だね。難しいことをさらりと言ってる。大衆に紛れ、つまらない日常を繰り返しているなら、それは自分で「日陰」を選んでいるだけのこと。自分の人生を恐れるな。覚悟があれば、いくらでも日の浴びる道を歩いていける。無一文どころか、実はすでに輝く世界に包まれてる。ただ気づきさえすれば、と。・・・でも、ビンボーはイヤです。楽して好きなことがしたいわ。
邦題『明るい表通りで』。1930年ミュージカル『ルウ・レスリーのインターナショナル・レヴュー』でハリー・リッチマンが歌った。ビンボーの唄をリッチマンが歌うなんて卑怯。ただ世界恐慌のため、95回しか上演されなかったらしい。唄は同年、コメディアン・バンドのテッド・ルイス楽団がチャート2位の大ヒット。他のスイング・バンドも独自アレンジで挑戦し、この曲はスタンダードになっていく。



Concert Years
Concert YearsElla Fitzgerald

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1953年。まだ戦後のジャズ・フィルハーモニック東京ライブ。エラさんが最初に持ってきた唄が「明るい表通り」でした。苦しい毎日に追われる日本の人たちに伝えたいメッセージ。なんか優しいなあ。元気が貰える。それが音楽にできること。音楽にしかできないこと。


With Oscar Peterson Trio
With Oscar Peterson TrioLester Young

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まだ新進気鋭、売り出し中のオスカー・ピーターソン・カルテットが、大御所レスター・ヤングのサポートを受けた1952年アルバム。もちろんピーターソンのピアノは元気に弾け回るし、ハーブ・エリスもテクニシャンだけど、やっぱりレスター・ヤングが渋いわ。ゆったりと肩の力が抜ける。明るい日の当たる通りは、ムリに自分を曝け出すところではない。自分が自分らしくあるところ。


New Orleans Piano Wizard: Live
New Orleans Piano Wizard: LiveJames Booker

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我が道を行くマッド・ピアニスト、ジェイムズ・ブッカー。1977年モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライブです。「明るい表通り」はwalking songだと思います。のんびり歩いていると、その歩調に合わせて思い浮かんでくる唄。心の中で歌いながら、ずんずんどんな遠い道でも歩いていける。それがジェイムズ・ブッカーだと、いつの間にかスキップに変わっちゃうんですよね。恥ずかしいわ。


Joshua Redman
Joshua RedmanJoshua Redman

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ジョシュアが壊れてる。1993年ジョシュア・レッドマン23歳のデビュー作。大変だよなあ。普通に吹いても上手いのに、それだけじゃ留まれないんですね。誰も歩いていない道を僕は歩いていきたい。そんな意思表明。ベースにクリスチャン・マックブライド。表ジャケットは真剣な面持ちで佇んでますが、裏にすると吹き出しちゃってます。耐え切れなんだか。お茶目な奴。
http://www.joshuaredman.com/