SOLITUDE

「愛を失う」とはどういうことかと言えば、この作品。


SOLITUDE
1934 (Eddie DeLange / Duke Elington) Hazel Miller


In my solitude
You haunt me
With reveries of days gone by


孤独のなかで
あなたの面影が離れない
過ぎ去った日々とともに


孤独のなかで
あなたは私を笑っている
消えない思い出とともに


椅子に座り、絶望に浸る
こんな悲しみが誰にあろうか
無限の闇を見つめながら
ただ、気が狂うのを待つだけ


孤独のなかで
私は神に祈り続けている
私の愛を返して下さい、と


この「私を笑っている」の「笑う」が"taunt"で、「嘲り笑う」なんだよなあ。「面影が離れない」も「お化け屋敷(haunted house)」の"haunt"。つまり、払いのけても払いのけても「あなた」の顔が宙に浮かび、「私」を冷ややかに笑っている。そういう状況です。木村敏先生のいうポスト・フェストゥム状態。「過去」がすがりついてきて、逃れることができない。これは気が狂いそうにもなるわ。そして、それでも「あなた」のそばにいたい。そう願うことが「愛」。
1933年にデューク・エリントンが作曲。翌年に歌詞が付いた。作詞にアーヴィン・ミルズの名も入っていますが、彼はエリントン・バンドのマネージャーで、便乗して自分の名も残そうとしただけ(彼は「キャラバン」の作詞で有名)。この身の毛もよだつ歌詞はエディ・デランジェの功績。

エリントンの名曲をすべてダンスに替えたミュージカル『ソフィスティケイティド・レディーズ』から。


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The Great Summit: The Complete SessionsLouis Armstrong & Duke Ellington

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エリントン・バンドをバックにサッチモが歌う。なんて豪華な取り合わせ。


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気だるい曲を集めたヘレン・メリル。「ソリチュード」も、ゆっくり物悲しい。


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さらに重く沈んだ歌声になると、ニーナ・シモン。幼い頃からクラシックのピアニストを夢見て研鑽を積むが、黒人であることを理由にカーティス音楽学校への入学を取り消されてしまう。彼女はレッスンを続けるためにナイトクラブで働き、そこでポピュラーソングにクラシックの要素を付け加えた新しい音楽を生み出す。60年代の公民権運動でも、彼女は先頭に立って歌った。


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starこれぞジャズの神髄を伝える一枚だ

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1957年、レッド・ガーランドのピアノ。でも、ここでの聞き所は、若手としてコルトレーンが起用されていること。それぞれのパートが個性をぶつけ合う、ハードバップの極意が存分に現れている。


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starいいんだけどやや物足りないかなぁ
starはじめて買ったモダン・ジャズ
starサキソフォン・コロッサスと並ぶソニー・ロリンズの代表作

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同じ1957年でも、ソニー・ロリンズが西海岸に遠征したとき、現地のレイ・ブラウンシェリー・マンと組んだアルバム。なにしろ「ピアノは要らない」という、当時としては斬新な試み。


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「この任務は気が進みません」「気の進む任務があるのか?」。世の中は理不尽で、人はその理不尽に巻き込まれるしかない。手足が飛び散り、内蔵をぶちまけ、さっきまで生きていた人間が次の瞬間「死体」に変わる。これは反戦映画でも好戦映画でもない。ただの「日常」を淡々と3時間に詰め込んだ作品。理不尽さにかぶさっていくエリントンの「ソリチュード」。
「プライベート」とは「二等兵」の意味だそうです。でも「誰も知らない」の意味も掛けてあるよなあ。隊長に感情移入するよう仕組まれながら、隊長がいない「今」から回想する構成を取ることで、「誰も知らない経験」を描き出すことに成功している。つまり、最後のシーンで観客は「語らない死者」の立場に身を置き、生き残った者の言葉を聞くことになる。