LILI MARLENE

終戦記念日の歌をアップし忘れていました。


LILI MARLENE
1938(Hans Leip / Norbert Schultze) WuM


Underneath the lantern by the barrack gate
Darling I remember the way you used to wait


バラック作りの門灯の下で
あなたは待っていてくれた
そして、僕にやさしく囁く
「愛してる、いつまでも」
愛しのリリー・マルレーン


点呼のラッパが別れの合図
あなたを抱き僕の心に刻む
門灯の光の届かぬところで
おやすみの口づけをしよう
愛しのリリー・マルレーン


指令が届きどこか遠い国へ
あなたはきっとあの街角で
今も僕を待っているだろう
足音が聞こえてくるようだ
愛しのリリー・マルレーン


前線近い兵舎でしばし休息
離れていてもあなたを想う
あなたが待つ灯りの仄かさ
その面影が僕の夢を捕える
愛しのリリー・マルレーン


泥にまみれて行進しながら
背嚢の重みに崩れかけても
あなたへの愛で力が満ちる
これくらい、何ともないさ
愛しのリリー・マルレーン


「夜霧深く立ちこめて」と日本語の歌詞もあるリリー・マルレーン片桐和子氏の訳詞です。そちらのほうが名訳だから、わざわざ訳すまでもないのですが、元の歌はどう歌われていたのだろうと思い、訳してみました。愛する人と別れ、戦地に赴く若い兵士。自分の命も懸かっているでしょうに、それにしては気楽なラブソング。戦争の怖さを知らないな(とはいえ、英詩は何通りもあるし、ドイツ語はどうなんでしょう?)。
1915年ドイツの詩人ハンス・ライプが出した詩集が原詩。これに1938年シュルツェが曲を付け、ラーレ・アンデルセンがレコードにした。そのときは600枚しか売れなかったと言う。しかしそのうちの2枚が前線慰問用レコードに紛れ込み、1941年6月北アフリカ戦線のベオグラード放送でこの曲がかかり、ドイツ兵だけでなくイギリス兵の間でも瞬く間に流行。ナチスの宣伝相ゲッペルスはこれを憂慮し、放送禁止にするとともに原盤を破壊させた。


Lili Marleen
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ラーレ・アンデルセンは身の危険を感じ、スイスに住む夫と手紙で連絡を取り、亡命のための列車に乗った。しかし、その「夫の手紙」はゲシュタポの罠で、彼女はナチスに逮捕されてしまう。絶望した彼女は服薬自殺を図る。その情報をつかんだイギリスの新聞社が「ララ・アンデルセンはナチに殺された」と報道。ドイツ側は「イギリスは嘘つきだ」と逆キャンペーンのためにアンデルセンを一時釈放。彼女はこれを機に逃亡し、戦時中は子どもたちと身を隠していた。ドイツ敗戦後、やっと彼女は大衆の前に現れ、また歌を歌うようになる。



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すでに1939年にアメリカの市民権を得ていたマレーネ・ディートリッヒは、1943年からアメリカ軍の前線慰問活動を始める。そのとき「Lili Marleen」の綴りを「Lili Marlene」と変え、自分の名前(Marlene)と重ねることで持ち歌にし、反ナチスの立場を表明した。戦後アメリカとフランスから名誉勲章を授章。映画と歌で活躍しながら晩年はパリで余生を送ったが、1992年彼女の死後、彼女自身の意志に従ってその遺体はベルリンに運ばれそこに埋葬された。ドイツを愛していた女性である。


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ラーレ・アンデルセン自伝をもとに、彼女の半生をドラマとしたもの。1981年ドイツ映画。戦後、再登場した彼女を、ドイツの市民は温かくは迎えてくれなかった。「リリー・マルレーン」はドイツの人たちには辛い思い出と重なりすぎていた。敗戦後35年過ぎて初めて、その当時のことを振り返るゆとりが出てきたのかも知れない。


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ジャズとしては、このブルーベック。引退してからも、ぼちぼち録音してます。タイトルの「Private」は、もちろん「プライベートの」という意味と、軍事用語の「一兵卒」という意味とが掛けてあります。戦時中の流行歌を題材に選んでいる。ブルーベックは1944年のバルジの戦いに徴兵され、ジョージ・パットンの指揮下で西部戦線を戦った。パットン司令は輪廻転生を信じていて、1ヶ月の間に兵士を2万人戦死させている。ブルーベックさん、よく生き残ったなあ。このときにポール・デズモンドと知り合い、二人で帰国してからバンドを組む約束をしているので、そうした出会いが生き延びる力となったのかな。