DON’T EXPLAIN - W&R : Jazzと読書の日々

ああ、忙しくてなかなか更新できません。

DON'T EXPLAIN
1944(Billie Holiday) Tom Smith

Hush now don't explain
Just say you'll remain

今は黙っていて、言い訳しないで
ただ「ここにいる」とだけ言って
戻って来てくれたことが嬉しいの

何も言葉にせず、言い訳しないで
言い訳で何が得られると言うの？
その口紅の話なんて聞きたくない

私はあなたを愛している
愛は何にでも耐えられる
私が想うのはあなただけ
私の全てはあなたのもの

人の噂に泣かされてきた
あなたの嘘も知っている
本当かどうか気にしない
あなたがいてくれるなら

だからお願い、静かに黙っていて
あなたは私の喜び、痛み、命の光
だから、言い訳なんて必要ないわ

いや、この口紅は、職場の宴会の出し物で女装したとき・・・ああ、聞いてもらえない。家に帰ってきたら、一方的にまくし立てられて、「それは誤解だよ」と説明しようにも、チャンスも与えてもらえないの図。まずい、これはとてもまずい。
邦題『言い訳しないで』。ビリー・ホリディが作詞作曲した曲に、アーサー・ハーツォグ・ジュニアが編曲して仕上げたもの。夫のジミー・モンローに向かってビリーが詰問した言葉がモチーフとなり、そのまま歌にしている。出版登録が２年後の1946年になっているところを見ると、初めは、ただ愚痴を歌って気を晴らしていただけかも。でも黒人社会の中での女性蔑視はきつい。そのことでこの歌は共感を呼び、歌い継がれるようになった。

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マイアミのシンガー・ソングライター、キャット・パワーことショーン・マーシャル。今年出したカバーアルバムが全米12位になりました。敬愛するアーチスト、ジャニス・ジョプリンやジョニ・ミッチェルらの曲。シナトラの「ニューヨーク・ニューヨーク」もまるで別の曲のように恐ろしい。ビリー・ホリディでは「言い訳しないで」を取り上げ、さらに歌詞も変えて恨みを籠らせている。「ここに座りなさい。今度はあなたが泣く番よ」と。この枯れた歌声でもっとビリー・ホリディを歌ってほしいのだけど。

For Lady
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コルトレーンやジャッキー・マクリーンのバンドでトランペットを吹いていたウェブスター・ヤング。唯一のリーダー作が、ビリー・ホリディに捧げたこのアルバム。1957年。刑務所の塀に佇む女性のジャケット。しかしウェブスターとビリーの接点は分からないので、どうやらピアノのマル・ウゥルドロンのほうの意向じゃないかと思う。30歳のマルはこの年ビリーの伴奏に抜擢されて彼女の死まで付き添い、名曲「Left Alone」も作っちゃうんだし。

Ballads
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ストレートなまでにハードボイルドなデクスター・ゴードン。麻薬のせいでアメリカを離れ、1960年代からパリに活動拠点を移していた彼は、1976年にニューヨークに帰ってきます。なぜ帰って来たか。言い訳はしない。このテナーに聞いてくれ。

Don't Explain
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ブラッド・メルドーのピアノが聴かせる。2004年。ゆったり系サックス奏者ジョエル・フラムがピアノの伴奏だけでスタンダードを吹いていく。ソニー・ロリンズの「オレオ」を、こんなリズムで吹いたテナーは他にないんじゃないか。引き込まれます。

Possibilities
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ウケ狙いのハービー・ハンコック。有名アーチストを曲ごとにフィーチャーして、ポール・サイモン、スティング、ジョニー・ラングなどなどの豪華キャスト。客層がどこか分かりません。なりふり構わないほどハンコックさん、売れてないのでしょうか？　「言い訳しないで」はアイルランドのフォーク・シンガー、ダミアン・ライスとのコラボ。ダミアン・ライスの、少年のような声が不思議（YouTube）。チェット・ベイカーを想わせます。