BRAZIL
「夢のなかの恋人」というテーマなら、この映画があったなあ。
BRAZIL
1939(Ary Barroso) Roger Pabst
Brazil, where hearts were entertaining June
We stood beneath an amber moon
And softly murmured "Someday soon"
We kissed and clung together
ブラジル、二人の心はざわめく六月
琥珀色の月の下に立ちながら
優しく「いつかすぐに」とささやき
二人は口づけをし、抱きしめ合った
しかし、明日という日はまた別の日
朝になると僕は遠く離れていた
君に話すべきことが沢山あったのに
そして今、夜明けが空を染めていく
僕は愛のときめきを思い返しながら
一つの決意を心に秘める
さあ帰ろう、懐かしきブラジルへ!
がーん! 六月の歌? いや、大丈夫か。六月は過去の話。二人で過ごした、ときめきの夜。今は遠く離れ旅路にあるけれど、帰りなん、いざ、ブラジルへ! きっとこれは、盆と暮れしか帰れない、単身赴任サラリーマンの歌だな(ブラジルは2月がお祭りの月。レッツ・カーニバル!)。
原題『Aquarela do Brasil』(ブラジルの水色)。1939年雨の日にアリ・バローゾが作曲したサンバの名曲。実はブラジル、1930年にジェトゥリオ・ヴァルガスが軍事クーデターを起こし、ずっと独裁政治を行っていた。若者の国外逃亡が増加。これは、いかん。このままではブラジルがおじいちゃん・おばあちゃんの国になってしまう。カーニバルの踊り子さんがいなくなるではないか。そこで「愛国心高揚サンバ」として選ばれたのが、この曲だったそうです。過疎化した農村のUターン・ソングのような。
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ジョージ・オーウェルの小説『1984年』を元に、さらに過酷な未来を映像化。監督自ら「1984年版『1984年』」と名乗る管理社会の気味悪さを、コンピュータではなく(1984年はMac初号機が生まれた年)空調設備として描くことで、グロテスクな風景を映し出すことに成功している。ロバート・デ・ニーロ演じる謎の配管工タトル氏が時たま笑いを添えてくれるが、それで収まらないストーリー展開だから嫌らしい。
主題歌「ブラジル」を歌うのはケイト・ブッシュ。エンディングのほうは、ザビア・クガート・オーケストラ。なぜブラジルか? ブラジルの軍事独裁が終わるのが実は1985年。つまり「未来世紀」ではなく「すぐそこ」の話。