EASY TO REMEMBER - W&R : Jazzと読書の日々

こんなところで使われるんだ。映画『カポーティ』を見ていて思ったので。

EASY TO REMEMBER
1935(Lorenz Hart / Richard Rodgers) Will Osborne

Your sweet expression, the smile you gave me
The way you looked when we met
It's easy to remember, but so hard to forget

君が見せてくれた優しい微笑み
僕と出会ったときの君の眼差し
思い出すことはなんて簡単で
忘れることはなんて難しいんだ

今も君の声が耳元で囁いている
「いつまでも愛している」と
分かってる、もう終わったこと
でも忘れるなんて出来はしない

だから僕はいつも夢に見ている
僕を抱く君の手、僕に触れる指
夢見ているほうがマシだろう
一晩中淋しさに苛まれるよりも

どんな思い出も鮮やかに甦って
そのたびに心が締め付けられる
それでも、思い出してしまう
忘れることはなんて難しいんだ

人間に、なぜ記憶力なんかあるのだろう。そんなものがなければ、こんな辛い思いなどしなくて良いのに。でも忘れられないのは、それが大切な思い出だから。ちなみに、どうでも良いような三角関数とか、ほら、もう覚えてないでしょ？　覚えているのはいつも、大切な「誰か」とのこと。そしてそれが「僕」を縛る。
邦題『思い出はやすし』。1935年の映画『ミシシッピー』で使われた曲。主演のビング･クロスビーが歌った。彼のレコードは同年ヒットチャート１位になっている。

晩年のビリー・ホリデイ。思うように声は出なくても、彼女は歌う。

Smooth Operator
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1954年映画『カルメン』でアカデミー賞にノミネートされ、黒人であるが故に受賞できなかったドロシー・ダンドリッジ。翌年、貧困のうちに死去。その42年間の短い生涯のなかで、彼女は何を思い返していたのだろう。せめて歌うときくらいは、幸せな思い出を。

Ballads
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「Easy to Remember」だけ他の演奏とは違い、１年前の1961年に録ったもの。ベースがレジー・ワークマン。別テイクを７曲入れたてんこもり盤もあります。長い期間をかけて作ったアルバムだから、よく聞く「マウスピースの調子が悪かった」は言い訳で、この時期はシングル・トーンの実験中だったのでしょう。でもコルトレーンを「ジョン様」と呼ぶのはカンベンして欲しいな。

Tribute
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キースのケルン・ライブ。10人のジャズ偉人に捧げた選曲になってます。そして締めに使われているのが、コルトレーンに向けた「Easy to Remember」。「あなた方のことは忘れません」というメッセージになってます。

Standard Time, Vol.3: The Resolution Of Romance
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ウィントン・マルサリスが父親のエリス・マルサリスに感謝を込めて。互いに思い合っている、柔らかな演奏。父親の前だからか、ウィントンが「いい子」をしてます。

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見た映画は『カポーティ』なんですが、その中の「アラバマ物語」試写会で「Easy to Remember」が流れます。「アラバマ物語」の原作者ハーパー・リーはトルーマン・カポーティの幼馴染み。そういえば家に時々遊びにくる男の子がいたなあ。あれがカポーティ少年だったようです。
「アラバマ物語」は弁護士の父親を描く作品。街中を敵に回しても、被告の無実を証明しようとする。かっこいい。映画「カポーティ」でカポーティが殺人事件の被告に接近していくのも、彼の中に「ネルの父親」への憧れがあったのかも知れません。「Easy to Remember」は、あの子ども時代の思い出。でも、現実は甘くない。「ティファニーで朝食を」や「冷血」の作者カポーティは、この事件を機に小説を書くことが出来なくなっていきます。